筑紫哲也さんが亡くなったら、その人の分、何かが変わる。

| | トラックバック(0)

 ふと、なぜ、世の中が存在しているのかと、考える。何故に、こうして自分が生きているのかと、感じる。そうすると、どこともなく、自分の意識をかすめる風を感じる。それは、どこからか吹いてくるのかわからない。しかし、どこからか、自分をゆする振動を感じる。目の前には、パソコンがある。ネットをひらけば、色々な情報がはいる。10年前とは異質である。もちろん、20年前と比べたら雲泥の差である。特に、デジタル化に関しては、驚嘆する変化がある。振り返れば、戦争がある。その前には、明治維新がある。その前は、徳川の世があり、関が原があり、下克上の乱世があり、その前は、荘園制度の貴族政治があり、藤原時代につながる。源氏物語の世界でもある。そして、もっと、さかのぼれば、弥生時代、縄文時代につながる。そのなかで、自分と同じ感覚をもった人間が生まれては死んで、生まれては死んでいった。そうすると、それらが、ひとつの線でつながることになる。毎日のようにテレビキャスターとして活躍していた筑紫哲也さんが、先週の金曜日(11月7日)になくなられた。TBS系の「NEWS23」で、約20年間、キャスターを勤められた。テレビ朝日系のニュースステーションの久米宏さんとともども、10時から12時まで、報道番組の顔として、我々の脳裏に焼きついている。

 

 その筑紫哲也さんは、もうこの世にはいない、火葬されているので、残るのは、筑紫さんの骨だけである。なんとも、奇妙な光景である。筑紫さんが出演されたNEW23が、サスペンス番組とともに、私の家にあるビデオの中に録画されている。それを見ようと思えば、いつでもみれる。多事争論で、意見を述べる筑紫さんのコメントは、どこかの記憶にのこっている。平日の(土日を除く)毎日、決まった時間に、決まったチャンネルをつけると、決まった人の顔が出てきた。それも一年ではなく、5年、10年、筑紫哲也さんが、番組を下りるまで、約20年弱、続いていたのである。まだ、73歳である。がんで、倒れなければ、後、2?3年は、現役で活躍できたはずである。考えてみれば、人の命はあっけない、世の中、確かに、朝に元気よく、いってきますといって家を出た人も、夕べには、遺体として、無言の帰宅をすることもある。だから、ある意味、70歳まで、現役でキャスターを勤められたこと、それ自身、偉大なことでもある。ただ、あっけない命の終焉だから、余計、命とは、人の命とは、このようなものなのだと感じる。

 

 そう、ぎりぎりなのである。自分がこうして生きていられるのも、ぎりぎりのところを歩んでいると感じる。蟻が地面を歩いている。自分は、できるだけ、踏みつけないように歩いているつもりだが、いつも、地面を見て歩いているわけではない。自分は、蟻を踏みつけて、歩いているとは言いたくはないが、蟻を踏みつけるとは意識していなくても、確率的には、踏みつけて歩いているのは事実である。子供のころは、罪悪感がないため、平気で、蟻を踏みつけていたと記憶している。蟻からみれば、いつ踏みつけられるかわからない。突然、上から大きな靴底が見えてきたら、高い確率で、その蟻の命は終わりになるのである。一匹の蟻は、いつもギリギリのところで生きている。そう、きっと、我々も同じである。何か、自分以外の力を受けて、内からの力と外からの力とが、どこかで、バランスがつりあっていて、生きていられる。そのつりあいが悪ければ、病気になったり、最悪、事故にあったりする。そう、そのバランスが崩れたら、命が落ちていくような感じである。塀の上を歩いている感覚でもある。落ちたら、お終いという感覚である。

 

 なぜ、こういう世の中が存在しているのか分からない。なぜ、物質が存在しているのかわからない。なぜ、この宇宙があるのかもわからない。だから、なぜ、自分がこうしているのかさえ、分かるわけがない。寝ている時は、自分にとっての世界は停止している。しかし、それでも世間は動いている。筑紫さんも同じ感覚を持っていたはずである。その筑紫さんは、もういない。そう、筑紫さんがいなくなった日以降も、同じように世界が動いているように見える。しかし、確かに、微妙に違うのである。筑紫さんがいなくなった世界が動いているからである。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 筑紫哲也さんが亡くなったら、その人の分、何かが変わる。

このブログ記事に対するトラックバックURL:

このブログ記事について

このページは、中野満が2008年11月10日 14:59に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「世界同時不況、8年間の市場経済の幻想がはじけ、新たなビジネスモデルが生まれる。」です。

次のブログ記事は「行政の無駄を指摘する会計検査院、不当利得をなくせ。」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。