求めているのはアスリートシンガーである。
子供の日に、近くの神社で、女子高校生の吹奏学部の演奏会があった。吹奏学部、トランペット、トロンボーン、サックス等の金管アンサンブル、フルート、ピッコロ、クラリネット、オーボエ等の木管アンサンブル、ドラムや木琴やタンバリンやボンゴ等のパーカッションの編成のものだった。特に、リズム担当は、ローテーションを組んで、楽器を変えていた。ドラムをたたく人、木琴をたたく人、タンバリンをたたく人は、指揮者の動きをじっと見ていた。その指揮者のタイミングにあわせて、リズムを奏でていた。まさしく、陸上の団体競技と合い通じるものがあった。
運動の基本のひとつは、走ることである。長く、早く走ることであれば、陸上の花は、やはり、マラソンである。42.195kmをできるだけ早く走ることで順位が決まる。市民ランナーの目標は、出来れば、42.195kmを完走することである。それだけではないが、やはり、どこかで、それを求めている。でなければ、そんなしんどいことはしない。そして、長く走るためには、それなりのフォームが必要である。前のめりであったり、後ろに倒れていたりしたら、長距離は走れない。どこかで、無理な負担が体にかかり、どこかをいためてしまう。姿勢と呼吸が大事だということである。ランニングをしているひとなら、だれでも理解できることである。
歌を歌うのに、大切なのは、やはり姿勢と呼吸である。ある意味、歌を歌うのと、走ることとは、同じことである。長距離を走るにも、それなりの筋トレが必要である。そして、姿勢が崩れて、呼吸の道筋が乱れたら、息があがり、走れなくなる。走れば、足の筋肉が鍛えられ、腹筋も同時に強くなる。長距離ランナーのアスリートは、走ることに関心がいくのは当然だと言えば当然だが、本来は、歌うための条件をも作り上げていることを忘れている。何がいいたいかといえば、アスリートに、喉をあけて、声を出す練習をつめば、シンガーになれるといいたいのだ。
ボイストレーニングは、喉をあけて、腹で作り上げた息を、綺麗に鼻腔に共鳴させることである。そのための訓練でもある。一番大切なのは、その息を送り出す体や体力を作り上げることである。その体とは、車でいうと、エンジンである。動力源である。その動力源がいい加減だったら、息もあやふやになり、そこで作り上げる音程も不安定になる。うまく歌いたいなら、まず、体を作れと言うことである。そして、喉をあけて、その息が乱されずに、直線的に、鼻腔にあたることなのである。車のよさは、エンジンのよさでもある。声のよさも、息をつくり、押し出す力があるかどうかである。そして、喉があいて、乱されずに、出て行くかである。ボイストレーニングの真髄はそこにある。乱れないこと、乱さないことである。
アスリートは、すでに、体が出来上がっている。息をつくり、それを持続的に押し出す力は十分にあるからである。その基礎体力は、十二分にある。あとは、ボイストレーニングだけである。喉をあけて、その息をどのようにあてるか、それだけである。喉があいて、息がとおれば、いい声がでる。とくに、アスリートが、喉をあけて、その息の使い方をマスターすれば、よいシンガーになれる。だから、シンガーが、逆に体をきたえるため、ランニングをするのは、そのためでもある。
いい歌い手は、声量感がある。声量は、声の強さと量である。音圧と音量の積がエネルギーであるから、声量感があるとは、エネルギーをもった人ということである。いいランナーとは、早く、長く走れるひとである。早くとは、キックの圧力であり、長くとは、その量である。つまりエネルギーをどれだけ長時間出せるかである。まったく同じである。そのエネルギーを乱さず、有功的に使えるかである。喉をしめたら、乱れて、そこで、エネルギーは消費される。せっかく作っても、4/5は、振動や喉を痛めるエネルギーにつかわれてしまう。いい声にはならない。走ることも、その力が、綺麗に、踵と地面に伝達されなければ、その力が、体に吸収され、体をいためることになる。
シンガーになりたいなら、走ることである。ある意味、急がばまわれである。ハーフやフルマラソンを走りきれる体力があり、その苦しさを楽しさに変えられる精神力があれば、人に感動を与える歌を歌えることは可能である。吹奏学部の女子高生が、将来、音楽で生きていたいと考えるなら、音楽をやりながら、陸上をやることである。吹奏学部をやりながら、同時に陸上部にも席をおき、陸上部の人と一緒に走ることである。基本的に、陸上をやっている人は、リズム感がいい、逆に、リズム感がいい人は、いい陸上の選手になれるはずである。
メジャーのシンガーは、筋トレをやっている。そして、走っている。だから、いつまでも若い。老化は、足からやってくる。そして、脳にきて、あの世へと旅立つ。足腰を鍛えることは、脳を鍛えることでもある。歳をとっても、ハーフやフルマラソンにチャレンジしている人は、いつまでも若い。そして、喉を開いて、声を出す人も、いつまでも若い。そう、これから求めているの人は、アスリートシンガーなのである。
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