大阪、此花パチンコ店放火殺人の犯人(高見容疑者)の愚かさ

 76日の夜、パチンコ店放火殺人事件の犯人、高見素直容疑者(41歳)が、山口県警の岩国署に出頭してきた。「誰でもいいから人を殺したいと思い、人が多数いるところに火をつけた」と容疑を認めているそうである。自首してきたのである。放火した後、犯人は、西へ西へ、岡山、広島、そして、岩国まで、逃げて、そうして、逃げ切れないと思い出頭してきたのである。

 

 ある意味、一番単純な動機であり、ある意味、一番、許せない動機でもある。経済的に追いこめられていたこと、その重圧感、孤独感、特に、誰れ、かれに、恨みつらみがあったわけではなかったから、この犯人は、ある面、ほっとして、警察の前で心情を露呈したはずである。警察官も、面識があるわけではないので、肩を叩いて、相手が自分の殻にこもらないように、うまく調子を合わせながら、調書を作成していることだろう。

 

 報道によると、高見容疑者は、「複数の消費者金融から借金があった。仕事も金もなく、人生に嫌気がさして、通り魔みたいに人を殺したいと思った」といっているそうである。人間の弱さをつついた、なるべくしてなった事件である。サラ金、パチンコ、不況、派遣切り、格差社会、個人主義、単価主義、福祉切り、それらのキーワードをつないで、今回のパチンコ店の放火殺人を連想すれば、ここまできたかという印象はいなめない。もちろん、そうであっても、普通の人はそんなことは絶対にしないし、許されることではない、だから、自首したとしても、最終的には、死刑を求刑されるはずである。

 

 サラ金の金の出所は、昨年末までのバブル資金である。サラ金も、確率論で、いくら貸し付けたら、いくらの焦げ付き、その貸付量、貸し付けた人の状態をチェックしている。なぜ、多重債務をしている人にも金を貸すのか、貸し付けたほうが、それでも返済される率がいいからである。個別の事情などない、確率で、貸し付けたほうが、全体的にいいか悪いか、よければ、多重債務だろうが関係ない、それが、アメリカ流金融理論のやり方である。日本のマンダ流とは違うのである。だから、この高見容疑者は、借りるのである。そして、仕事がない、むしゃくしゃする。ばちんこで、一攫千金と考える。これも、デジタル博打である。突っ込めば、ある程度は出てくる。これも確率論である。資金が多いほど、回収率もいい、しかし、どんなものでもリスクはある。そのリスクをカバーできるぐらいの資金が必要なのである。

 

 メタボと一緒、禁煙といっしょである。規制がなく、無尽蔵に供給されたら、だれだって、自制など困難になる。おいしいものがあれば、食べる。愛煙家もそこが自由にすえる場所ならぷかぷか吸う。それと同じである。人間の弱さに漬け込むのが、市場原理である。原則は自己責任である。自制でき、コントロールできる人は、うまくいく。しかし、たいていの人は、コントロールなどできない、暴飲暴食、メタボになり、糖尿病になり、腎炎になり、ガンになり、リュウマチになる。規制がかからなければ、慣性が働き、そのまま崩壊の道へ行く。管理するよりも、好きな酒を飲んで、好きなものをたらふく食べて、働かないで、好きなときに寝て、だらだらと生きたほうがらくだからである。それが、エントロピー増大の法則だからである。

 

 サラ金から多重に債務がなければ、この高見容疑者は、泥棒を働いたかもしれない。しかし、パチンコ店を放火し、無差別に人を殺すようなばかな真似はしなかったかもしれない。何かの形で、社会に規制があれば、この男にも抵抗がかかり、ばかな真似はしなかったかもしれない。規制があるから、禁煙がすすむ。少なくとも、大手の病院は全館禁煙である。新幹線も飛行機もである。これから、少子高齢化、ワークシェアーもすすむ。情報のネットワーク化で、世界の均質化がすすむ。格差は解消されてくる。資本主義の金銭や物品の上下、高低差で生じた金融、為替の利潤も段々と減ってくる。規制が入るからである。すこしづつ、世界は日本の江戸時代化へとすすむ。加速度を下げて、ゆっくりとエコをかけて、生きる世界を求めるはずである。それなくしては、地球温暖化はとまらない。それなくしては、1000年後。2000年後の未来など地球にはないはずである。

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このページは、中野満が2009年7月 7日 07:19に書いたブログ記事です。

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